Jimmy Pageがアレイスター・クロウリーの邸宅を買い取った時、世界はLed Zeppelinが悪魔と契約したと思った。真実は、もっと複雑で、もっと音楽的だった。
Jimmy PageとAleister Crowley
Jimmy Pageがオカルトに傾倒したのは、Led Zeppelin結成前から始まっていた。彼が影響を受けたのは20世紀初頭の魔術師、Aleister Crowley(1875-1947)。「獣666」とも呼ばれたCrowleyは、「意志の魔術(Thelema)」を提唱し、「汝の意志するところをなせ(Do what thou wilt)」を信条とした人物だ。
Pageは1970年代、Crowleyがかつて所有していたスコットランド・ネス湖畔の邸宅「Boleskine House」を購入。魔術的儀式が行われたとされるこの家を、Pageは「インスピレーションの場所」として大切にした。また、ロンドンにはCrowley関連の書籍・グッズを扱うオカルト専門書店「Equinox」を開いていたほどだ。
ZoSoシンボルの謎
Led Zeppelin IVのレコード盤に記されたPageの象形文字「ZoSo」は、今も解読が試みられ続けている。Pageは長年「ZoSo」の意味について沈黙を守ってきた。占星術的なシンボル、土星のサインを変形させたもの、あるいはCrowleyの魔術書から取ったものという説がある。
確かなのは、Pageが「シンボルは音のように機能する」と信じていたことだ。言葉よりもシンボルが持つ力——それがオカルト思想の核心であり、Pageの音楽哲学とも重なっていた。
オカルトが音楽に与えた影響
では、オカルト趣味はLed Zeppelinの音楽にどう反映されたのか。
「Kashmir」(1975年)の8分7秒は、エジプト・北アフリカの砂漠をイメージしたとされるが、曲の反復する構造、終わりのないループ感は、瞑想的な魔術的トランス状態を想起させる。奇しくも、Crowleyの魔術儀式でも反復的なチャントが重要視されていた。
「Stairway to Heaven」の歌詞——「天国への階段を買う女」「二つの道がある」「すべては変わらないが変わる」——は、錬金術的な二元論を反映しているという解釈がある。光と闇、上昇と下降、物質と精神。Robert Plantはこれを「自動書記のように書いた」と語っている。
「No Quarter」では「風が泣き、雪が闇の道を覆う」という詩的な歌詞が展開される。John Paul Jonesがキーボードで作り出した幻想的なサウンドスケープと合わさり、儀式音楽のような空気を持つ。
「暗黒」は意図的な戦略だったのか
Jimmy Pageは、オカルトを「信仰」ではなく「知的探求」として捉えていたと証言している。彼にとってCrowleyの哲学は、自己実現と意志の力についての体系だった。
しかし一方で、「悪のオーラ」がバンドのブランドに貢献したことも否定できない。ロックが反抗の象徴だった時代、禁断のものへの接近はアーティストとしての磁力を高めた。
音楽評論家のDave Lewis は「Pageのオカルト趣味は、彼の音楽の暗部を照らすランタンだった。実際に呪いがかかっていたかどうかではなく、そのイメージが音楽に謎の層を加えた」と述べている。
悲劇との関係——バンドへの「呪い」?
Led Zeppelinのキャリアは度重なる悲劇に見舞われた。1977年、Robert Plantの5歳の息子Karakが脳炎で急死。同年のアメリカツアーは中断。1980年、John Bonhamが32歳で急逝しバンドは解散を余儀なくされた。
これらの悲劇を「オカルトへの関与がもたらした呪い」と結びつける者は多い。しかしPageは「悲劇と音楽的選択を混同するな」とコメントしている。
Jimmy Pageにとってオカルトは宗教でも狂気でもなく、音楽を生み出すための「もう一つの言語」だったのかもしれない。その言語が時に誤解され、神話化され、バンドの音楽をより多層的なものにしていった。




